世界難民の日「難民・避難民の約4割は子ども」UNHCRが強い懸念
2024年6月20日 17時04分 国連
6月20日は、国連が定める「世界難民の日」です。世界では各地で紛争が相次ぎ、難民や避難民の増加に歯止めがかかりません。その数は1億2000万人を超え、日本の人口に匹敵すると推計されています。NHKの取材に応じた国連のグランディ難民高等弁務官は、難民や避難民の増加に歯止めがかからない一方で、欧米では難民などの受け入れに反対する政治勢力が支持を広げているとして、強い懸念を示しました。
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所によりますと、世界の難民や避難民は、去年まで12年連続で増え続け、ことし4月末までに1億2000万を超え、日本の人口に匹敵する規模になったとみられています。
スイスのジュネーブでNHKの取材に応じたグランディ国連難民高等弁務官は「人々に避難を強いる紛争が増え続けている。数か月ごとに新たな紛争が発生し、以前から続くアフガニスタンやシリアなどの紛争も解決していない。 紛争を解決するには国家間の協力が必要だが、分断された世界ではそれが極めて難しい。ウクライナやガザ地区をめぐる情勢で国家間の溝はさらに深まってしまった」と述べ、強い危機感を示しました。
一方、欧米各国で難民などの受け入れに反対する極右や右派の政治勢力が支持を広げている現状について「難民や移民の問題を利用している政治家もいる。『難民や移民は危険な存在で受け入れる余地はなく、押し戻さなければならない』というのは簡単だが、人々に移動を強いる要因は非常に強く、政治家たちが提示する対策では問題は解決しない」と述べ、強い懸念を示しました。
そして難民などの75%は欧米より経済的に貧しい国々が受け入れているとして「受け入れに応じている国々への支援を強化すべきだ。人道的な支援からより長期的な支援もあり、日本にはこうした取り組みを主導してもらいたい」と述べ、日本を含む国際社会が継続して支援に取り組む重要性を強調しました。
国外に逃れた難民・避難民「日本の人口に匹敵する規模だ」
UNHCRは、最新の報告書の中で、世界各地で紛争や迫害などによって国外に逃れた難民や国内避難民について「日本の人口に匹敵する規模だ」として強い懸念を示し、国際社会の支援を訴えています。
それによりますと、世界の難民や避難民は去年末の時点で、前の年より880万人多い1億1730万人となり、12年連続で増加しました。このうちパレスチナのガザ地区では去年10月以降、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が続く中、人口の75%にあたる最大170万人が避難民となりました。また、アフリカのスーダンでは、去年4月から軍と準軍事組織の衝突が続いていて、新たに710万人以上が避難したということです。
約4割 4700万人が子どもと推計
また去年までに世界各地で住まいを追われた人のうち、およそ4割にあたる4700万人が子どもだと推計されています。
20日、都内でNHKの取材に応じたユニセフ=国連児童基金のキティ・ファンデルハイデン事務局次長は「子どもが住まいを追われるということは、学校や保健施設、栄養のある食事へのアクセスを奪われる目の前の問題だけでなく、教育や収入といった子どもたちの将来にも影響する」と話しました。
そして世界各地で紛争が相次ぎ難民が増え続けている状況について「子どもたちは争いを始めていないし、止めることもできない。『世界難民の日』は、子どもたちの苦しみに心を寄せる大切な日だ」と述べ、子どもたちの保護を訴えました。
「難民の子どもたちの幸せ願いつくられたこいのぼり」
こいのぼりは、UNHCR=国連難民高等弁務官事務所の支援をうけて、ミャンマー出身で難民として日本国籍を取得したファッションデザイナーの渋谷ザニーさんがデザインしました。
こいのぼりの色はUNHCRのシンボルカラーの青色でUNHCRのロゴから着想を得ていくつもの人の手がつながっている柄が描かれ難民の子どもたちの幸せへの願いなどが込められています。
長崎市はことし3月に世界の300余りの自治体が加盟する「難民を支える自治体ネットワーク」に加わったことから、このこいのぼりを市役所に飾っています。
長崎市国際課の大西淳哉係長は「こういった取り組みをきっかけに難民支援の輪が市民にも広がり長崎市がめざす平和な世界の実現につながってほしい」と話していました。このこいのぼりは21日まで飾られています。
都内の商業施設 難民などをテーマにした本を紹介
これは、UNHCR=国連難民高等弁務官事務所の駐日事務所が企画したもので、東京・世田谷区の商業施設にある特設コーナーでは、絵本を中心に難民などをテーマにした40冊あまりの本が紹介されています。
なかには、安全な国を目指す親子の旅を子どもの目線で描いた絵本や、難民の子どもたちが自身の経験をもとに描いた絵が使われている本も並んでいます。
また、ミャンマーで迫害を受けたイスラム教徒の少数派、ロヒンギャの男の子が主人公の絵本も並んでいました。
紹介されている本を手にとっていた60代の女性は「見ているだけでこみあげてくるものがありました。戦争の一番の被害者は子どもなんだなと思いました」と話していました。
夫婦で訪れていた60代の女性は「難民について考えるきっかけになると思います。知らないことが多いので、いい取り組みだと思います」と話していました。
また、今回の特設コーナーで紹介されている小説、「やさしい猫」の作者、中島京子さんも訪れていました。中島さんは「絵本がたくさんあり、難民について子どもたちに伝えようとしている方がたくさんいるのだなと思いました。遠い話だと思ってしまうのはしかたがないことだと思いますが、物語や絵、写真があることで自分たちも考えるべきことだと教えてくれると思います」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240620/k10014486481000.html