「暑がり」と「寒がり」、どちらも快適に過ごすコツは?
エアコンのプロに聞いた
蒸し暑い日が続き、エアコンを使用する機会も増える季節となってきました。そんなときに気を付けたいのが、体感温度の違いによるトラブル。自宅や職場で悩ましい思いをしている人もいるのではないでしょうか。
エアコン「Eolia(エオリア)」を製造販売するパナソニックは7月4日、20~60代の既婚会社員男女550人を対象に行った「エアコンと体感温度」に関するアンケート調査の結果を発表。本記事では、その結果とともに同社エアーマイスターの福田風子さんによる「暑さ・寒さをコントロールしながらエアコンを活用する方法」を紹介します。
「暑がり」 VS「寒がり」、多数派はどっち?
「暑がりか寒がりか」を聞いたところ、「暑がり」(29%)、「どちらかと言えば暑がり」(30%)と、「暑がり」と答えた割合が59%となりました。これは「寒がり」と答えた割合の約2倍となっており、自身を「暑がり」と感じている人が多いことが分かります。
併せて「夏のエアコン使用時に設定温度が不快と感じることがあるか」と聞くと、「頻繁にある」(34%)、「たまにある」(60%)と、94%が不快と感じることがあると回答しました。
具体的にはどのような不快感を感じているのでしょうか。「不快感の感じ方」を見ると、「とても暑い」(13%)、「やや暑い」(67%)、「やや寒い」(18%)、「寒い」(2%)という結果に。80%の人が「暑い」、20%の人が「寒い」と感じていることが明らかになりました。
不快に感じる人が多いとなると、心配なのがそれを原因としたトラブル。実際に「体感温度の違いから揉めたことはあるか」と聞くと、「頻繁にある」(11%)、「たまにある」 (51%)と、6割以上が「揉めたことがある」と回答しました。
併せて「体感温度の違いを感じた際の理想的な対応方法」を聞いたところ、「暑いと感じる人が寒い人に合わせる」(58%)、「寒いと感じる人が暑い人に合わせる」(42%)となりました。暑がりな人は多数派であると同時に、自分たちが寒がりな人に合わせるべきと考えているようです。
暑がり・寒がりが同室で過ごすコツ! 「PMV」をコントロールしよう
調査結果から、9割近くの人が体感温度の違いを感じた経験があることが明らかになりました。そこで、パナソニック エアーマイスター 福田風子さんが、暑がりな人と寒がりな人が同室で過ごすコツを紹介します。
●6つの要素で算出される「PMV」で暑さを正しく理解しよう
暑さを理解するために重要になる指標が、快適性評価「PMV(Predicted Mean Vote)」。人がどれくらい快適かを表す指標で、1994年に国際的な標準として規格化されました。温度、湿度、放射、気流、活動量、着衣量という6つの要素から算出され、人が感じる暑さ・寒さの度合いを−3(寒い)から+3(暑い)の値で示します。つまり、PMVにおける温度以外の要素をコントロールすれば、同じ設定温度のまま快適な体感温度で過ごすことが可能になるということです。
●着衣量でPMVをコントロール
環境省が取り組む「クールビズ」が呼びかける「快適に過ごせる軽装」も、PMVの要素の1つ「着衣量」に注目したもの。室温28℃時の「軽装」と室温26℃時の「スーツ」の温熱感はほぼ同じとされています。着衣量のコントロールは、シンプルながらも効果のある方法といえそうです。
●気流でPMVをコントロール
気流(風速)をコントロールすることで、体感温度は1~2℃変化します。例えば、扇風機で「中」程度である秒速1メートルほど風速が上がると、体感温度は約1~2℃くらい変わります。暑いと感じている人は、個別に扇風機を併用することで、体感温度を下げることが可能ということです。同じ考え方で、エアコンの風向きを変えることも有効な手段となります。暑がりな人に風が直接当たるように風向きを下向きにし、寒がりな人が直接当たらない場所に移動するとよいということです。
体感温度別、PMV活用法! 節電効果もある?
PMVは暑がりな人と寒がりな人が同室で過ごす場合以外でも、エアコンを効果的に活用するために重要な指標です。体感温度別に、PMVの指標を用いた効果的なエアコン活用法を紹介します。
●暑がりな人は、風量を上げて節電に
設定温度を下げずに風量をアップさせれば、体感温度を下げることが可能です。設定温度を1℃下げた場合に比べて、設定温度を変えずに風量をアップさせた場合、年間約1400円以上も節約できることが分かっています(※パナソニック製のエアコン「CS-F403D2」を使用した場合。電気代31円/kWhでの実験)。空気を冷却するよりも風量を強くする方が、少ないエネルギーで済むためです。
●寒がりな人は、冷えすぎを避けて快適に
着衣量や風向きを調整するなどしてPMVをコントロールすることで、“冷えすぎ”を避けることができます。パナソニックが2023年5月に行った調査でも、エアコンを我慢する理由として「電気代がかかるから」に続いて最も多かったのが「冷えすぎるから」という回答でした。ですが、熱中症予防の観点からエアコンは我慢せずに活用したいところ。適切なPMVコントロールで、冷えすぎを避けながら熱中症の予防をしましょう。
文:吉原 悠一
リンク:https://trilltrill.jp/articles/3192852