人間の心理を徹底解剖!いつも見かけるあの現象には理由があった
どうして嫌なことは、嬉しいことより忘れられないの?
―嬉しい思い出よりも、嫌な思い出の方が鮮明に覚えているものですよね。これはなぜなのでしょうか。
「人間の情報処理というのは、心理的側面に影響を受けやすいんです。ネガティブな体験は、また次に同じようなことを経験しないように、脳が詳細に情報を処理します。逆に、楽しいことは自分にとって危険ではなく、細かな部分まで情報処理されないので、ふわっとした記憶になりがちです。心理学的には、前者は『精緻な情報処理』、後者は、『概略的情報処理』と言います。」
―情報処理というのは、具体的にどういうことでしょうか。
「例えば、話の内容、電気やファンの音、音や光、温度、湿度といったあらゆる内容を人の脳は記憶しようとします。『楽しい時はすぐに時間が過ぎる』とも言いますが、楽しい時はその体験だけで満たされてしまっているので、先述したような細かな情報には注意が向かないのです。反面、退屈だったり、嫌な時は周囲の全ての情報に注意が向きやすく、脳が神経質になっているため、なかなか時間が経たないように感じるのです。
他にも、交通事故の時ってスローモーションのように見えると言いますよね。あれも、脳がネガティブなことだと判断して、あらゆる情報を集めて危険に対処しようとしているからなんです。基本的に脳は良いことよりも、リスクを回避する方向に働きやすいのですね。」
―だから、嫌なことは細部まで覚えていて、ついつい根に持ってしまったり、落ち込んでしまうけれど、楽しいことはぼんやりとしたイメージでしか記憶に残らないのですね。
やってしまった後悔よりも、やらなかった後悔の方が長引くのはなぜ?
―やってしまった後悔は時間とともに忘れていきますが、やらなかった後悔はずっと尾を引くような気がします。みなさんにもそのようなことがあるのでしょうか。
「いいところに気が付きましたね。実は、心理学では後悔が2種類あると考えられているのです。やってしまったことに対する後悔である『行為後悔』と、やらなかったことに対する『非行為後悔』です。 行為後悔はもう結論が出てしまっているので反省もしやすい。一方で非行為後悔は、こうしていたら…、ああしていたら…、という思いがどんどん湧き上がってくるんです。これを、事実に反していることを仮想する、と書いて『反実仮想』と言います。これが、やらなかった後悔が長引いてしまう原因です。」
―ということは、基本的に迷ったらやってみた方が良いのですね。
「後悔について研究をしているアメリカの研究者、ニール・ローズ博士は『人間は絶対に後悔するから、やらないよりもやって後悔しなさい』とおっしゃっていますね。」
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