カスハラ増加の背景には「顧客」側の心理と 「過剰なサービスの一般化」が
カスハラ増加の背景には「顧客」側の心理と 「過剰なサービスの一般化」が
カスタマーハラスメントが増えてきた背景は、どのようなものがあるのでしょうか。
1つは「店員を下の立場の者」と考える顧客の存在です。
日本社会では長年「お客様は神様」と例える「顧客至上主義」が共通意識として存在し、「店舗は可能な限りサービスを向上し、客に対して丁寧に接客すべき」という価値観が良いものとされてきました。
その価値観に基づいた接客を受けるうちに、「お客様が上、店員は下」という感覚が生まれ、顧客の中に「自分の下の立場にあたるべき店員には理不尽な態度をとってもいい」と考える・感じている人が発生しているおそれがあります。
2つめは金額以上のサービス提供が一般化したことによる影響が考えられます。
顧客至上主義によって値段を上回るサービスが恒常化、それによって顧客が思う要求水準がどんどん高まり「顧客の期待するサービス」と「従業員の提供できるサービス」に生じた落差がトラブルを引き起こしている可能性です。
丁寧すぎるサービスが標準となっていることによって、本来プラスアルファであったサービスが当たり前になり、「プラスアルファがない」=客側が「適切なサービスを受けられなかった」と感じてしまう場面が増加したのではないでしょうか。
企業は従業員を守るためにカスハラ対策を
先述のように、認知されていないけれどもカスタマーハラスメントが原因で離職する従業員はかなりの人数存在していると言えるでしょう。
過剰なサービスによる人手不足の中、教育した従業員が客からの理不尽な悪質クレームが原因で辞めてしまっては企業にとっても大きな損失。またカスハラがあるという業界イメージが独り歩きしてしまうと職業選択の候補から除かれてしまい人材が来ない……という悪循環のきっかけにもなりえます。
2019年5月に成立したハラスメント防止法でも、顧客からの悪質行為は言及されています。また迷惑行為への対応のために何が必要かと問われた業務従事者の4割が「企業の組織体制を円滑にする」「企業のクレーム対策教育が必要」と回答しました。
お客様の安全・安心を守ることは企業の第一でありましたが、これからは「従業員をお客様から守る」ために企業が率先して対策をとっていく必要があるのではないでしょうか。
リンク:https://www.altpaper.net/b/7457
[単語]
1. 過剰(かじょう):]必要な程度や数量を越えて多いこと。
2. 恒常化(こうじょうか):常にこうである、そうあって当然である、と認識される状態にすること。
3. 落差(らくさ):その高低の差。
4. 悪循環(あくじゅんかん):事態がますます悪くなること。