コロナ禍の影響「女性、より重く」
政府研究会「収入は家計補助、考え改めて」
コロナ禍は女性にとりわけ大きな影響 を与えている――。そう指摘する報告書を政府の有識者研究会がまとめた。ジェンダー格差が大きい日本の社会構造が背景にあると指摘し、いまだに根強い「女性の収入は家計の補助」という考えを改めるときだと訴えている。
報告書は内閣府が設けた「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」が28日に公表した。支援団体へのヒアリングや統計分析をもとに「雇用と経済」「女性への暴力」「健康」「家事育児などの無償ケア」の4分野を検証した。
2020年平均の非正規労働者数は男性が前年より26万人減ったのに対し、女性はその倍近い50万人減った。女性の働き手の割合が高い飲食・宿泊業やサービス業が打撃を受けたためだ。報告書では、生活の糧をDV加害者に頼らざるを得ないために逃げることをためらうケースもあると言及し、経済的自立の重要性をあらためて指摘した。
国の調査データを独自に分析し、小学校の休校があった昨年4月ごろ、小学生以下の子どものいる女性は、いない女性より就業が難しかった実態を明らかにした。シングルマザーの失業率が昨年7~9月に大きく上昇したことも示した。
日本では今も男性が家計を支え、女性は補助的に働くのが標準的だと想定され、社会保障や税制の仕組みが設計されている。報告書は、共稼ぎで非正規労働の女性なら世帯収入の2割、正社員の女性なら4割を稼ぐことを示した調査もあると指摘。女性の収入は家計の補助という認識は改める必要がある、と提言した。
DV相談の件数(20年4月~21年2月)は17万件を超え、前年同期の1・5倍にふくらんだ。性犯罪・性暴力被害のワンストップ支援センターへの相談件数(20年4~9月)も前年同期の1・2倍に増えた。
研究会の座長を務めた白波瀬佐和子・東京大大学院教授は28日の記者会見で、女性への影響が大きいのはジェンダー格差が深刻であることの表れだと指摘。「コロナ禍だから対策をやらなければいけないということではなく、これ以上格差を広げては次の世代が生き延びるすべがない」と述べ、ジェンダーの視点を採り入れた政策立案が不可欠だと強調した。(岡林佐和)
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[単語]
1. 働き手(はたらきて):一家の生計を支えて働く人
2. 共稼ぎ(ともかせぎ):ともに働いてそれぞれかせぐこと。
3. DV:一般的には配偶者や恋人など親密な関係にある人からふるわれる、さまざまな暴力のことです。