大多数は平和的 暴動に一線、募る怒り 米抗議デモ
抗議デモの本当の目的が奪われているようだ―。
米中西部ミネソタ州で黒人男性が白人警官に首を圧迫され、その後死亡した事件を機に全米に広がった人種差別や警察の暴力への抗議デモ。暴徒化した一部の集団による放火や略奪が注目されているが、実際にはデモ参加者の大多数は平和的だ。参加者は暴動とは一線を画しつつ、デモ隊に力を行使する警官への怒りも募らせている。
デモが連日行われているニューヨーク市ブルックリンの屋内競技場バークレイズ・センター周辺では5月31日、ショーウインドーが割れた店や、略奪対策として、窓ガラスに板を張る店があり、混乱の爪痕が残っていた。集まった数千人のデモ隊はこの日、同センターの周囲を練り歩き、手を挙げ、「撃たないで」と叫びながら行進した。
近くを通る車両はクラクションを鳴らして連帯を示し、沿道の住宅の窓やベランダからは住民の声援が上がる。暴動とは無縁のような光景だ。しかし、時折一部が警官とにらみ合いになり、ペットボトルが警官隊に投げられると、参加者からは「やめて」という声も漏れた。
ニューヨーク市では連日複数の場所でデモが行われている。夜になると過激化する傾向があり、30日夜には350人近くが拘束され、警官30人以上が負傷した。31日夜も放火が起きている。米メディアによると、これまでに高級ブランドのシャネルの店舗なども略奪の標的になった。教師の黒人女性(23)は「暴徒化する人は、抗議者ではなく、この機会を利用して、暴力を振るいたいだけ。(黒人の命も大切と訴える)抗議デモの本当の目的が奪われているように感じる」と語った。
一方、ブルックリンで30日に行われたデモで、デモ隊と対峙(たいじ)していた警察車両が、群衆に突っ込む動画が拡散。デブラシオ市長は「数百人のデモ隊が自分に向かって集まってきたらどう思うか想像してほしい」と擁護したが、さらなる不信感を生んでいる。
インド系女性(34)は「警察は平和なデモ隊に車で突入した」と主張し、「テロ」と非難した。白人女性(30)は「警察は処罰を受けることなく暴力的でないデモ参加者をたたき、催涙ガスを発射している。そうなったら抵抗する人もいる」と指摘。「暴力というけど、私たちは武装した警官と違って、段ボールしか持っていない」と語り、威圧的な警官に問題があると訴えた。
リンク:https://news.yahoo.co.jp/articles/9bea7254a17bfb4f1035be31f848b6ba1654b951
[単語]
1.一線(いっせん):戦いで敵と直接ぶつかる隊列。また仕事などで、最も活動する位置。第一線。
2.募る(つのる):ますます激しくなる。広い範囲に呼びかけて集める。募集する。
3.奪う(うばう):他人の所有するものを無理に取り上げる。
4.圧迫(あっぱく): 強くおしつけること。 武力や権力などで押さえつけること。押さえつけて規模を縮小させること。
5.機に(きに):きっかけとして
6.暴徒化(ぼうとか):集団が秩序を失い暴力・破壊行為を繰り広げる人の群れとなること、暴徒と化すこと。
7.略奪(りゃくだつ):力ずくで奪いとること。暴力で自分のものとすること。
8.一線を画す(いっせんをかくす):境界線を引いてくぎりをつける。はっきり区別する。
9.爪痕(つめあと):天災や戦争などが残した被害や影響。
10.撃つ(うつ):強くうち当てる。武力を加える。
11.擁護(ようご):侵害・危害から、かばい守ること。
12.催涙ガス(さいるいがす):毒ガスの一種。涙腺を刺激して涙を催させるもの。
13.威圧的(いあつてき):威力などで相手を押さえつけようとするさま。