「中国人の予約入ってますか」…予約客が旅館に電話、回答次第でキャンセルも
栃木県那須塩原市の複数の温泉旅館で1月下旬以降、予約客から中国人の宿泊予約の有無を尋ねる電話が相次いでいることが、旅館関係者への取材でわかった。現在予約がなくても、予約があれば断れないなどと回答すると、キャンセルされたケースも。新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を懸念したキャンセルとみられ、旅館側が頭を悩ませている。
「中国のお客さんから予約が入っていますか」。塩原温泉郷の「松楓楼松屋」に今月に入り、予約客からこんな電話が入った。「今のところありません」と答えると、「本当ですか」と確認され、「これから中国人の予約が入った場合は断るか」と問われたという。旅館業法上、明確な理由がある場合を除いて宿泊拒否はできないことを伝えると、「それでは取り消します」とキャンセルされた。
ほかにも中国人の宿泊予約の有無を確認する電話が2件あり、同様の対応を取ったところ、電話を切った後にインターネットを通じてキャンセルされたという。田代茂樹社長(60)は「塩原は中国人観光客が少ないので、新型肺炎の影響は少ないと思っていた。こういった影響は予想外だ」と困惑する。
旅館「湯守田中屋」には、同様の問い合わせが10件以上あった。このうち2件について、「お客様と同じ日に香港の方の予約があります」と伝えたところ、2件ともキャンセルされたという。田中佑治専務(27)は「香港でも感染者は出ているが、キャンセルにつながるとは思っていなかった」と話す。湯守田中屋では、スタッフがマスクを着用し、宿泊客にもアルコール消毒やマスクの着用を促すなどの対策を行っているという。
塩原温泉観光協会の君島将介会長(58)によると、市内の別の旅館でも同様の理由でのキャンセルが1件あった。中国人の宿泊予約の有無に関する問い合わせは、ほかにも多くの旅館にきているといい、君島会長は「新型肺炎の影響で日本人が旅行を自粛することが懸念されている中で、このような別の影響が出てしまうと観光地として苦しい。いつまで影響が続くのか不安だ」と話す。また、例年は塩原に比較的多く訪れている台湾からの観光客が今後、中国本土の人と間違われることを恐れ、旅行を自粛することも心配だという。
リンク:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200204-00050234-yom-soci
[単語]
1.相次ぐ(あいつぐ):物事があとからあとから続いて起こる。
2.困惑(こんわく):どうしてよいか判断がつかず迷うこと。
3.自粛(じゅしゅく):自分から進んで、行いや態度を慎むこと。