ペット長寿化、飼い主の健康も考え費用準備を…
「15年で犬300万円・猫150万円、治療費など別途」
暮らしに癒やしや元気を与えてくれるペット。最近は寿命が延びており、シニア世代が飼う場合は、最後まで面倒をみられるかどうかを慎重に判断したい。世話などを支援してくれるサービスを把握し、万が一の事態に備えておくことも大切だ。
大阪府豊中市の会社員、上田佳明さん(68)と、妻の京子さん(66)は3年前から雌猫のななを飼っている。20年以上飼い続けた猫が死んでペットロス状態だった時、見かねた知人が譲ってくれた。2歳を過ぎていたが、今ではすっかり懐き、上田さん夫妻は「毎日楽しく、生活に張り合いがある」と口をそろえる。
一般社団法人ペットフード協会(東京)の2018年の犬猫飼育実態調査によると、60代で犬を飼っている人は14%、猫を飼っている人は10%で、70代ではそれぞれ10%、8%だった。飼育者の約4割が、今後苦労しそうなこととして「自分や家族の病気、入院などによる飼育困難」を挙げた。
獣医師で、東京大学名誉教授の佐々木伸雄さんは「ペット飼育は生きがいを得たり、仲間づくりにつながったりする利点がある。ただ、高齢者の場合、自身の健康などの問題もあり、飼うにあたっての準備が必要」と指摘する。
まず認識しておきたいのは、ペットの寿命だ。同協会によると、犬の平均寿命は14・29歳、猫は15・32歳。飼う前に、餌やりや散歩などを続けられるか考えたい。しつけには時間も根気もいる。佐々木さんは「生まれてから数年たち、基本的なしつけが終わっているものを動物保護管理団体などから譲ってもらうのも一考」と話す。
突然の病気やけがで、ペットの世話ができなくなった時の対策も欠かせない。
頼める家族がいる場合は、ペットに慣れておくため日頃から触れ合う機会を設けておくと安心だ。一時的に世話を頼んだり預けたりする場合は、ペットシッターやペットホテルが役立つ。「こうした情報についても獣医師が詳しいので、かかりつけを作って定期的に通うとよい。ペットの体調管理にもなる」と、佐々木さんは助言する。
ペットの特徴などを書面にまとめておくように勧めるのは、NPO法人「ペットライフネット」(大阪市)代表の吉本由美子さんだ。かかりつけの病院名や連絡先、餌の種類や量、避妊・去勢の有無など、具体的に書いておくと急に世話をする人も困らない。いつも携帯している財布や手帳にも、緊急時の連絡先やペットを飼っていることなどを記したカードを入れておく。飼い主とペットが一緒に収まった写真も、大きさや特徴を想像しやすい。吉本さんは「外出中に不測の事態が起きることもありうる。ペットを救い出す手がかりになる」という。
あらかじめ死後の引き取り先を決めて飼育費用などを預けておく、ペットの信託サービスも広がっている。同NPOでは、引き取り先が決まっていなくても、NPOで預かり、新たな飼い主を探す信託サービスを手がけている。
吉本さんによると、犬を15年間飼えば300万円、猫を同期間飼えば150万円ほどの費用がかかる。病気の治療費や死後の埋葬料などは別途必要だ。吉本さんは「ペットを飼い続けて、路頭に迷わせないためには、それなりの費用がかかることも忘れないでほしい」と話している。
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