20年かけ修復「元の姿と違う」百済の石塔、韓国で批判
韓国で国の予算執行を検査する監査院は、約20年かけた修復工事が今月に完成した百済時代末期(7世紀)の寺院跡、弥勒寺址(し)の「西の石塔」(高さ約14・5メートル)について「原型通りに修復されず、安全性の検討も正しく行われていない」とする報告書を発表した。所管の文化財庁は釈明に追われ、韓国内で「ありえないことだ」と批判が起きている。
「西の石塔」は百済の都だった扶余から南へ約30キロにある寺院遺跡、弥勒寺址にあり「韓国最古の石塔」として国宝に指定されている。日本統治時代に補強されたコンクリートの傷みが激しくなったことから、2001年から約230億ウォン(約23億円)かけて大規模な解体修理工事が行われ、日本の古代史ファンの関心も集めていた。
報告書によると、修復過程で構造安定性が十分検討されないまま設計変更が行われ、当時の石材と新たに持ち込んだ石材を混ぜて積むなどした結果、元の姿と輪郭などが異なるようになったという。
監査院は「安全性を検討した上で、適切な措置案を検討すべきだ」と通知。4月に完工式を準備する文化財庁は「設計変更図に準じる図面を作成した」と釈明したものの、安全点検を実施すると発表した。
石塔はユネスコの世界文化遺産「百済歴史遺跡地区」の構成資産の一つで、地元全羅北道の観光資源になっている。地元の市民団体は「石塔のイメージが傷つき、住民は精神的な衝撃を受けた」として賠償を求める声明書を発表した。(ソウル=武田肇)
朝日新聞社
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【単語】
1. 修復 : 建造物などの、傷んだ箇所を直して、もとのようにすること。しゅふく。
2. 執行 : とりおこなうこと。実際に行うこと。
3. 監査 : 監督し検査すること。特に、会計監査・業務監査のこと。
4. 文化財 : 文化活動の結果として生み出されたもので、文化的価値を有するもの。
5. 釈明 : 自分の立場や考えを説明して、誤解や非難を解き、理解を求めること。
6. 規模 : 物事の構造・内容・仕組みなどの大きさ。
7. 解体 : まとまっているもの、組み立ててあるものを、分解すること。また、ばらばらになること。
8. 輪郭 : 物の外形を形づくっている線。物事の大体のありさま。概要。アウトライン。
9. 通知 : 告げ知らせること。また、その知らせ。
10. 遺産 : 先人たちが遺した有形・無形のものごと。「文化遺産」「世界遺産」など。
11. 衝撃 : 意外な出来事などによって強く心を揺り動かされること。また、その心の動き。ショック。
12. 賠償 : 他の人に与えた損害をつぐなうこと。
13. 声明 : 一定の事項についての意見や意思を世間に対して発表すること。また、その意見。