東京の不動産価格がこれから「下落」する必然
「家を買うなら五輪後」とまことしやかに語られる東京23区。しかし「この瞬間、大きな変化はすでに起こっている」と主張するのが、不動産事情に詳しく、多くのベストセラーを抱える牧野知弘氏だ。
「働き方改革」に象徴されるライフスタイルの変化に伴い、住まい探しの絶対的価値基準「沿線ブランド」「都心まで○分」が崩壊。それぞれの街の”拠点化”が進んだ先に新たな格差、「街間格差」が露呈し始めたという。牧野氏の新刊『街間格差 オリンピック後に輝く街、くすむ街』 の内容を一部抜粋し、再構成してお届けします。
■「都内不動産下落」が断言できる理由
これからの東京では「相続ラッシュ」が避けられないうえ、生産緑地の一部が賃貸や売却といった形でマーケットに拠出される「農地放出」まで控えており、結果として不動産の供給圧力が強くなります。
それに加えて「働き方改革」の影響などもあり、確実に起こってくるのが、隣り合った街と街との間で生じる格差拡大と不動産価格の「下落」です。
このように言うと、必ず受けるのが「東京は絶対に大丈夫だ。現に銀座の地価は平成のバブル期よりも上がっている」といった指摘です。
そのとおりです。ただし東京の不動産について考える場合、つねに「投資用の不動産」と「実需に基づいた不動産」との違いを理解しておかなければなりません。
例えば、毎年その価値が上がった、下がったと話題になる銀座5丁目の地価とは、あくまで「投資用の不動産」だということです。なお2020年以降、とくに五輪前後に東京に起こりうる景気後退、さらには世界経済の動向次第で、私は投資用不動産の価格でも下落局面がくると考えています。
ただし投資用マネーには必ず循環があります。例えばニューヨークやロンドン、香港やシンガポール、台北などの世界不動産マーケットの中で投資利回りを比較して、「東京が割安」と感じられれば、投資マネーは当たり前のように東京マーケットへ姿を現します。
東京の投資用不動産マーケットは世界の金融不動産マーケットの中に深く組み込まれています。ですので、これは『街間格差 オリンピック後に輝く街、くすむ街』の中で見いだそうと試みた「これから先、本当に住むべき街」というものとは、まったく別の世界の話題となります。
リンク:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190315-00270655-toyo-soci&p=1
【単語】
1. 不動産 : 日本法においては、土地及びその定着物をいうとされ(民法86条)、条文上の直接の根拠はないが、建物それ自体が土地とは別個の不動産とされる(不動産登記法はそのような前提で定められている)。
2. 下落 : 物価や相場、また、物事の価値などがさがること。
3. 必然 : 必ずそうなること。それよりほかになりようのないこと。また、そのさま。
4. 象徴 : 抽象的な思想・観念・事物などを、具体的な事物によって理解しやすい形で表すこと。また、その表現に用いられたもの。シンボル。
5. 崩壊 : くずれてしまうこと。こわれてしまうこと。
6. 格差 : 資格・等級・価格などの違い。差。
7. 抜粋し : 書物や作品からすぐれた部分や必要な部分を抜き出すこと。また、そのもの。
8. 賃貸 : 賃料を取り、物を相手方に貸すこと。賃貸し。
9. 売却 : 売り払うこと。
10. 五輪 : Olympic Gamesの翻訳語(意訳語)
11. 局面 : 物事の、その時の状況・状態。
12. 循環 : ひとめぐりして、もとへ戻ることを繰り返すこと。
13. 割安 : 品質や分量の割合からみると安価であること。また、そのさま。 ⇔ 割高
14. 金融 : 金銭の融通。特に、資金の借り手と貸し手のあいだで行われる貨幣の信用取引。
15. 組み込む : 体系の一部分として中に入れる。組み入れる。