老化物質抑えると、寿命延びた…ハエで実験成功「健康長寿に生かせる可能性」
老化によって増える特定のたんぱく質の働きを抑えることで、ショウジョウバエや線虫の寿命を延ばすことに成功したと、吉森保・大阪大教授(細胞生物学)らのチームが発表した。このたんぱく質は人にもあり、チームは「健康長寿に生かせる可能性がある」としている。
論文が19日、国際科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。
このたんぱく質は、吉森教授らが2009年に発見した「ルビコン」。細胞内で不要なたんぱく質を再利用する「オートファジー」の作用を抑える働きがある。
チームは今回、ショウジョウバエや線虫の体内では、老化するにつれてルビコンの量が1・5~2倍に増えることを確認。それぞれ遺伝子操作でルビコンを作れなくして寿命や健康への影響を調べた。
その結果、ショウジョウバエと線虫は寿命が最大約2割延びた。また、老化による運動機能の低下も防げた。吉森教授は「人の寿命を延ばせるかはわからないが、ルビコンの働きを抑える薬などがあれば、老後の健康を維持する方法につながるかもしれない」と話している。
福田光則・東北大教授(細胞生物学)の話「非常に興味深い成果だ。今後は、なぜルビコンがなくなると寿命が延びるかを詳しく解明してほしい」
リンク:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190220-00050015-yomidr-sctch
【単語】
1. 老化物質 : 生物において寿命を縮めたり加齢を促進する作用が示されている化学物質。
2. 抑える : ある水準以上には高まらないようにする。
3. 寿命 : 生命の存続する期間。特に、あらかじめ決められたものとして考えられる命の長さ。
4. ハエ : ハエ目に属する昆虫のうち、ハエ亜目・環縫短角群・ハエ下目に属するものの総称である。
双翅(そうし)目の中の一群。種類が多く,生態もさまざまで,日本に産するものだけでも数百種を越す。
5. 健康 : からだに悪いところがなく、丈夫なこと。また、そのさま。
6. 長寿 : 寿命の長いこと。ながく生きること。長命。
7. 細胞 : 生物体の構造上・機能上の基本単位。細胞質から成り、中に通常一個の核を有し、細胞膜に包まれている一個の微小な生活体。構造によって、原核細胞と真核細胞とに分ける。
8. 遺伝子操作 : 遺伝子を人為的に組み換えたり、それを生細胞に移入したりして操作すること。
9. ルビコン : 老化にともなう体の機能低下につながるたんぱく質のひとつ。
10. 老後 : 年をとってからのち。