日銀 追加利上げ決定 政策金利0.5%程度に引き上げ
2025年1月24日 13時53分 日本銀行(日銀)
日銀は24日まで開いた金融政策決定会合で、政策金利を0.5%程度に引き上げる追加の利上げを決定しました。経済と物価情勢の改善が続き賃上げに向けた動きも広がっているとして去年7月の会合以来の利上げに踏み切りました。
日銀は24日まで開いた金融政策決定会合で政策の変更を決定しました。
現在は短期の市場金利を0.25%程度で推移するよう促していますが、これを0.5%程度に引き上げ、追加の利上げに踏み切ります。
追加の利上げは去年7月の会合以来となり、政策金利は2008年10月以来、17年ぶりの高い水準となります。
日銀は追加の利上げを判断する上で、賃上げに向けた動きとアメリカのトランプ政権の影響を見極めるとしていました。
このうち賃上げについては、24日発表した声明で「企業収益が改善傾向を続け人手不足感が高まるもと、ことしの春闘において去年に続きしっかりとした賃上げを実施するといった声が多く聞かれている」としました。
また、トランプ政権の影響についてもいまのところ金融市場に大きな混乱はなく、当面は経済や物価情勢の改善傾向が続くと判断したとみられます。
一方で先月の生鮮食品を除いた消費者物価指数の上昇率が3.0%まで高まるなか、賃金の上昇を上回るペースで物価の上昇が続くリスクを抑える必要があるという判断もあったとみられます。
その上で日銀は今後の金融政策運営について、声明で「経済・物価の見通しが実現していくとすればそれに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」としました。
政策金利が17年ぶりの高い水準となり、預金の利息は増えることが見込まれる一方、金利の負担が個人消費や企業の投資にどのように影響するかが今後の焦点となります。
植田総裁はこのあと午後3時半から記者会見を開き、今回の決定の背景などについて説明することにしています。
9人の政策委員のうち 賛成8反対1
今回の追加の利上げは9人の政策委員のうち賛成8、反対1で決まりました。
反対したのは中村豊明審議委員で、3月に開かれる次の金融政策決定会合で企業の稼ぐ力が高まったことを経済指標などで確認した上で判断すべきだとしました。
【解説】経済部 大久保智デスク
午後1時のニュース映像です
Q.なぜこのタイミング?
A.今なお物価上昇が続いていることが大きい。
けさ発表された消費者物価指数は(生鮮除く)3%。
ガソリン、コメの価格も上がっています。
去年7月に物価上昇を抑えるために利上げをしたが、今なお、物価上昇が続いているので、さらなる利上げに踏み切った形です。
実は日銀は去年12月にも利上げのタイミングをうかがっていました。
ただ利上げは物価の急上昇を抑える反面、金利負担=利払い費が増えることにもなります。
経済情勢が芳しくない中での利上げは景気、特に消費の腰を折ってしまいかねない。
だから賃上げの動きが確かなのかどうか、さらにはトランプ大統領の政策で経済情勢が影響を受けないか、慎重に確かめようとこの時期まで見極めたのだと思います。
Q.金融市場や暮らしへの影響は?
A.金融市場で影響が大きいのは為替。
いままで円安が続いていたが、日本でも徐々に金利が上がってくるという見方から今後は円は買われやすく円高が進む可能性があります。
実際、1ドル=155円に。
円安のときは輸入品の価格が高くなったと感じる方も多かったと思うが円高になれば、そうした傾向はいくぶんおさまるとみられます。
ただ、輸出企業にとっては円高によって業績が押し下げられるリスクもあります。
一方、暮らしへの影響はプラスとマイナスの両面がある。
資産を運用するという面では金利のある世界は追い風になります。
預金の利息は増えるし、個人向け国債、個人年金の利回りは過去の利上げでよくなり、今回の利上げによってさらに上向く可能性があります。
しかし、お金を借りている場合は、金利の負担は増えることになる。
個人も企業もそうです。
食費、光熱費、家賃、企業だと原材料コスト、いろんなモノが上昇する中での金利上昇となる。
それだけに、負担感を打ち消すだけの収入=つまり賃金が持続的に上がるかどうか、また上がったコストを価格にちゃんと転嫁して、それがちゃんと売れるか。
今回の利上げが正しかったかどうかは消費をはじめ経済情勢を見ていく必要がある。
Q.植田総裁はこれから会見に臨みます。注目点は。
A.今後はどこまで利上げをするのか、その見通しがポイントです。
今回0.5%に引き上げたが、次の利上げで仮に0.75%になれば実に30年ぶり。
暮らしへの影響がますます大きくなります。
どこまで金利を引き上げようとしているのか、どんなペースで引き上げるのか。
植田総裁の見通しに注目したいと思います。